新・日本紀行(41)新宮 「神倉神社」 ,
巨大な岩塊がご神体の「神倉神社」
熊野川を境に三重県から、「紀の国」・和歌山県となる 、
河口付近の大河・熊野川は、熊野神社(速玉大社)を抱くように、巻くようにS字状に屈曲蛇行しながら流れる。
本来、川は急激蛇行などを嫌い、河跡湖(三日月湖)などを形成しながら、直線に流れようとするのが自然である。 だが、この地は堅い岩質である千穂ヶ峰・権現山という山塊に阻まれているためである。
千穂ヶ峰の北部中腹には、御燈祭などで知られる「神倉神社」が鎮座している。
速玉大社は、元々は神倉山に祀られている神倉神社が元宮であったが、後に現在地に遷宮された社であり、そのため神倉山の古宮に対し、ここを新宮と呼ぶようになり、町名の由来にも成っているという。
現在の神倉神社は、熊野速玉大社の摂社にあたり、新宮市西端の権現山の中腹に社殿はある。
神社社殿は急斜面の参道の上にあり、参道は見る者を圧倒するほどの、自然石を組み合わせ、積み重ねた数百段の石段からなる。 社殿裏には巨岩群があって、これが神倉神社の御神体の「ゴトビキ岩」と呼ばれるものである。
岩塊の周囲は注連縄で括(くく)られている。
ゴトビキ岩の下からは、弥生時代の遺跡である銅鐸などの破片も発掘されていて、おそらくは昔の縄文時代の祭事場ではないかと想定されている。
神道や神社などというものが存在する以前にゴトビキ岩は神として崇拝されていたのであろう。
古代の人は絶壁の上に神が宿ると信じていたらしく、自然岩を神体としているのは、先に記した「花の窟神社」や、滝を御神体とする那智の「飛瀧(ひろう)神社」とともに、古代の熊野の自然崇拝の姿を今日に伝えているものとされる。
熊野三所大神(熊野三山の神)が、熊野において最初に降臨した聖地が神倉山とされ、神倉山は熊野の根本であるとも考えら、熊野根本大権現とも呼ばれた。
今でこそ速玉大社の摂社(本社に付属し本社に縁故の深い神をまつった神社の称)であるが、本来は速玉大社の御祖神であったのである。
尚、速玉大社など新宮周辺の所縁地については、別項で記載してます。
新宮の市域は、大半が熊野の山地である。
狭い街の中央を国道42号が南北に貫通していて、市の外れよりR168が熊野川に沿って、その上流域である「瀞峡」や「熊野本宮社」へ向かっている。
小生はこのまま国道42号線を下る。
宇久井の浜、赤色海岸と海の蒼を堪能しながら、紀勢本線(愛称・きのくに線)と並行しながら、那智勝浦の町へ入る。
那智大社方面へ向かう道の角に「補陀洛山寺」(ふだらくさんじ)がある。
世界遺産にも登録され、平安初期、南方に補陀洛浄土(海の彼方にある極楽浄土)を目指し渡海する上人達の出発点として知られてる。
補陀洛渡海とは・・、
生きながらにして小さい船に閉じ篭もり、観音浄土を目指すという。
つまり、生きたまま海の彼方にある観音浄土へ向い、生身のまま成仏(じょうぶつ)・即身仏(そくしんぶつ)になるという、日本宗教史上における稀有な現象として知られ、チベット仏教伝来の修行信仰の一つとされる。
補陀洛山寺は渡海上人を送り出し、また、その上人を御祭りしているお寺である。
現在は御堂が僅かに1棟座してはいるが、由緒ある寺院で「世界遺産」にも登録されている。
南紀・東海岸から・・、
国道沿いには那智勝浦温泉のホテルの各種看板が目立つ。
中でも那智勝浦港への大きな案内版があり、港はこの国道より2kmほど先に在る。
この港の周辺が「勝浦温泉」の中心で、入江や岬、島に巨大ホテルが乱立している。
中でも、先般、我ら夫婦が泊まった「ホテル浦島」は、この地域で1、2を競う大きなホテルで独特な温泉である「大洞窟温泉忘帰洞」でも有名である。 (詳細は別項リンクに記載)
南紀勝浦温泉は、良質の温泉と熊野三山周辺の行楽観光の拠点として人気があり、さらに昨年(2004年)熊野三山周辺地域が世界文化遺産に指定されたことで、一層の賑わいをみせるだろう。
次回、湯川温泉
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